無風の風

なるべく風を意識して歩いていようとすると、場所によってそれには香りがついてくる。

風はそこに停滞するわけではなく、ちょっと前には公園の木々の間を通り抜けて葉っぱの息を吸いながらこちらに向かって

直前に焼き鳥のニオイに包まれて自分の周りを通り過ぎたりもする。



そのような一生に一度の出会いなのに麻痺をする。



画面から風は吹いてはこない。

あるのは目から入った「あるもの」が記憶や経験の壁を吹き抜けて、あるいは対流しながら流れていく。

その壁を撫ぜられたときに風が吹く。


無風の風が通ってほしい道に音の異なる鈴を飾る。

その一生に一度かもしれない出会いに麻痺しないようにと。


その鈴を鳴らした風がどちらにいったか追いかけたいので

道端に蝋燭を灯したりもする。